悪夢

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――夢。 有飛にとって、それはただの夢だというにはあまりにも酷過ぎた。 何せ、『自分』が殺されるのだから。 鏡を見つめながら、有飛は夢――もう悪夢そのものだが――の内容を思い返す。 ゴシック調の広間。倒れている人々。所どころにある血の飛沫。笑う『自分』。そして――虚ろな目をし、大鎌を持つ少年。 初めてこの夢を見た時は、それ程鮮明なものではなく、曖昧模糊でまさに泡沫だった。 それが月日を、年月を重ねるにつれ鮮明と化して行ったのだ。 今では場所も、少年の表情も、痛みと苦しみの度合いも――その心身に感じる事ができる。 「有飛ー! 何やってるの? 早くしないと、遅刻するわよー!」 「あー分かってるって! 今行くよ!」 有飛の思考は、母親の呼びかけによって一気に現実へと引き戻された。 怒鳴るようにして答えると、有飛は鞄を持ち小走りで家を出る。 ××××××× 扉を開けた先には、爽やかな青空が広がっていた。 しかし有飛の心中はそんな青空とは反対に、どんより曇っている。
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