悪夢

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原因はたった一つ。悪夢だ。物心ついた時から見始め、かれこれ十年ぐらいは経過している。 最初は偶然だと思った。 たまたまだと思った。 ただ、初めて見た時に布団を頭まで被っていた――つまり、寝ている環境が悪いだけだと思った。 それが、十年。 最早『偶然』などという次元ではない。これで精神異常を起こさない方が不思議だと思う。 「いつまで、あんな夢見ればいいんだよ……。まさか死ぬまで、とか言わないよな……」 小中学校時代にも使っていた、通い慣れた道を重い足取りで歩き、有飛は言う。口調にもどこか覇気がない。 後、何回『自分』は殺されなければいけないのか。 後、何回少年の眼差しに戦慄しなければいけないのか。 そう考えなかった時間はないに等しい。 有飛は気付いているようで、そうでなかった。 悪夢を見続けた故に、精神的な苦痛が蓄積されていたという事を。 慣れという名の免疫が、悪い方向についてしまった事を。 やがて有飛はある家の前でぴたりと足を止め、家を見上げる。まるで懐かしむように。
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