無意識恐怖

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有飛は軽やかな足取りで、家路についていた。この時も件の悪夢を見ていたが、今程鮮明なものではなく断片的なものであった。 自分の家の隣の隣にある、梅子の家。 庭には色とりどりの花が咲き乱れ、地面に華を添えている。そんな庭先で、梅子は雑草を刈り取っていた。 有飛は足を止め、元気良く梅子に声をかける。 その笑顔の無邪気さは、まさに小さな子供特有のそれといっていいだろう。 「梅ばあちゃん、只今!」 『梅ばあちゃん』。 これは、近所の子供達が梅子につけたあだ名だ。 子供達は誰もが皆そう呼んでいるし、梅子自身嫌がっている様子もなく寧(むし)ろ、それを喜んで受け入れていた。 「ああ、お帰り有ちゃん」 梅子も笑顔で答える。その右手には、草と草の汁がついた草刈り用の小さな鎌。 その直後――有飛の顔から、笑みが消え去った。 鎌が日光を受け、怪しく光ったような錯覚がして。 鎌を持ち上げた梅子が、今にも自分に襲いかかってくるような錯覚がして。 結果――有飛の心に強い、物凄く強い恐怖が芽生える。
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