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怖い。怖くて怖くて仕方ない。
何が?――鎌が。笑顔の梅子が持っている、鎌が。
何故?――分からない。理由が分からない。分からないが、無性に――異常に怖いのだ。
夢の中で何者かが持っていた、鎌。それと、重なって――重ねてしまうのである。
身体が震える。
手が震える。
腕が震える。
脚が震える。
歯が、かたかたと鳴る。
それらの震えが、寒さによるものではないと流石に有飛も分かる。
何故なら。今現在の季節が――夏だからだ。
風だって強くない。
水なんかかけられてない。
ましてや――雨なんて。
「うわああああああああッ!!」
「有ちゃん!? どうしたの?」
吸った息――酸素が続く限り、有飛は一心に叫ぶ。
そして梅子の言葉に答える事なく、全力でその場から走り去った。
とにかく、いたくなかった。
あんな『モノ』――鎌を、見たくなかった。
これ以上、視界に入れたくない。
そんな事を思いながら、有飛は走り続ける。気が付くと、既に家の前だった。ゆっくり振り返り、梅子の家に視線を移すと――
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