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とりあえずため息をついてみるが、そうした所でこの『遅刻した罰として草むしりをする』、という展開がなかった事になる訳ではない。
有飛はその場にしゃがみ、教師が来るのを待つ。
どのくらい、経っただろう。
ふと背後に人の気配を感じた有飛は、少々痺れた足を動かして後ろを振り返った。
そこには――
「悪いな英。草むしりのお供によさそうな鎌が、なかなか見つからなくてな」
右手に鎌、左手にはバケツ――中に軍手が入っていた――を持った教師の姿。
微かな日光に当たった刃の部分が、怪しげな光を放っている。
それを目にした有飛の表情が、冷めたものから一変、恐怖一色に染められた。
夢に出てきた少年の持っていた鎌――かなりの大きさであるが――と、教師の持っている鎌とを投影してしまったのだ。それも、無意識の内に。
そう。この頃から、有飛を悩ます悪夢は鮮明なビジョン(映像)を描き始めていたのである。
少年が大鎌を持っているという事が分かったのも、丁度この頃だった。
「英、どうしたんだ?」
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