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車の走行音が聞こえ、有飛の思考――意識は現在、則ち学校行きのバスが来たという現実に戻される。
有飛がはっとしてその方向に視線を向けると、まさにバスの自動ドアが開く所だった。
「いっけね! これ逃したら遅刻じゃん! 早く乗らないと……」
そう言って、急いでバスの所へと走って行く有飛。
バスの中には、時間が時間な為結構人が乗っていた。
空いていた座席――車体中央辺りの窓側の席――に座り、有飛は安心したように息を吐く。
窓の外には、《あの頃》と変わらない中学校の校舎が静かに、これから登校してくるであろう教師や生徒を迎え入れるかのように、佇んでいた。
そんな校舎を、有飛はぼんやりとした眼差しで見つめている。
そしてバスの自動ドアが閉まり、バスは発車した。
悪夢を見続ける一人の少年と、その他多数の乗客を乗せて――…。
彼等は知らない。今自分達が生きているこの世界に、人間のようで人間あらざる者達が、紛れ込もうとしている事を。
物語の本格的な幕開けが、着々と迫って来ている事を……。
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