序章(一)-転生、再誕-

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それは、揺るぎない意志。 それは、揺るぎない意思。 彼の眼差しに、今はもう罪悪感も迷いも戸惑いも、一切存在しない。――後悔の方については、まだ幾らかあるかもしれないが。 彼は、続ける。 「だから、転生して人間として生まれ変わったら――絶対に今のような失敗をしない。好きな奴には、ちゃんと自分の気持ちを伝えられるようになりたい。後悔なんてしたくないから。もっと上手に――生きたいと思う」 彼の決意を、意志を、意思を汲み取り。 女性は優しく微笑んだ。 「貴方の意志の強さが、来世の貴方に受け継がれているといいですね。願わくば、来世に幸福(しあわせ)な人生を……」 そう言って、玉座から立ち上がり数歩踏み出す女性。 白くしなやかな手には、太陽を象(かたど)ったきらびやかな杖が握られていた。 女性が呪文を唱えると、柔らかく眩しい光が空間をふんわり、包み込む。 その光の中に彼の姿も埋もれ、やがて天に昇っていった。 「また一人、転生していったのですね……」 吹き込む風の中で、ぽつりと女性は呟く。
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