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紫唯羅に言われるまま、彼は視線を自身の胸元へ落とす。
紫唯羅の言う通り、ペンダントはきちんと下がっていた。
「……ぁ」
「全く、天使である貴方がそんなでどうするのですか? 痴呆もいい所ですよ」
やはり棘棘(とげとげ)しい言い方だ。
彼を『天使』と呼ぶ紫唯羅、彼女もまた彼同様、この空間――『天界』で生きる天使なのである。
最も、彼女の場合は天界で一番高い位に立つ存在な為、『天』の『神』――則ち『天神(テンジン)』というのだが。
「あはは……申し訳ありません、紫唯羅様。どうも僕記憶力に乏しいみたいで。よく、こんな事があるんですよ」
彼は笑いながら言う。だがこの場合の『笑いながら』は、苦笑いでありさっきのような笑顔ではない。
「…………『記憶』?」
そんな彼を差し置いて、ぼそりと呟いた紫唯羅。
何やら驚いたような、はっとした面持ちで頻(しき)りに「記憶」、と呟き続けている。
いつもとは違う『天神』の様子に、彼は目を瞬(またた)かせる。
一体、どうしたというのか。
紫唯羅は口を開いた。
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