序章(二)-痛恨のミス-

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「まずいですね。本当にまずいですね。彼の悪しき記憶を、私は完全に消去しきっていませんでした……」 ――『彼』。 それが誰の事なのか、ついさっき天然っぷりを発揮したばかりの彼には、分からなかった。 でも確かに分かる事が一つだけ、ある。 それは―― 「紫唯羅様……早くその『彼』の来世を見つけなければ、大変な事になりますよ。下手すれば――」 「それは分かっています!! 早く、彼を探し出さなくては!」 紫唯羅は切羽詰まった様子で、彼に向かって怒鳴るように言った。 そう――その所謂(いわゆる)『緊急事態』が、早急に対処しなければならない内容だという事だ。 紫唯羅はローブと頭に被った長いベールの裾を引きずりながら、建物内へ駆け込んで行く。 その姿を、彼は呆然とした佇まいで見守るのだった。 物語の扉は唐突に、突然に、勢いよく、さながら突風の如く――開かれる。 『運命』という、『迷宮』。 『迷宮』という、『運命』。 そして『輪廻』という名の物語が――。 十五年の月日(とき)を越えて。image=212915729.jpg
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