360人が本棚に入れています
本棚に追加
市松模様の床に、豪華なデザインのシャンデリア。螺旋階段と、壁伝いに並ぶランプがゴシック調な雰囲気を出す広間に、彼は立っていた。
だが身体は、彼の『ソレ』ではない。
意識だけが、その身体に入っているような感じだ。
彼は『彼』であって、『彼』ではないのである。
そんな『彼』は、笑っていた。
馬鹿にするような、下卑(げび)た笑い方で。
その笑いは、『彼』の目の前にいる――『あるモノ』へ向けられていた。
『あるモノ』。
それは床に横たわる人々――どうやら負傷しているらしく、微動だにしない――に対してではなく、床に飛沫する血液でもなく。
大鎌を持つ、少年。広間にいる中で地に足をつけ、『彼』と同じように立っている唯一の人物でもあった。
少年の眼差しは虚ろに歪み、光を失っている。――もう、闇しか映せないと言わんばかりに。
『彼』の笑いにも応じず、ただ『彼』を見据えている。
また、この夢だ。
彼は、『彼』の笑い声を聞きながらそう思った。
毎日毎夜毎晩――ずっとこの夢を見続けている。
最初のコメントを投稿しよう!