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その頃、漣斗は今回の舞台のことを考えながら客席を見て回っていた。
「もうすぐ公演も終わりか…」
誰に言うでもなく少し名残惜しそうに一人呟く。
今日の公演は終了したので、観客席から舞台を眺めていても何も言われない。
それにスタッフさん達はもう撤収しつつある。
漣斗は前の方の席に行くと、ある席に白いコートがかかっているのを見つけた。
一番前の真ん前…誰が座っていたのだろう?
最後のアンコール時の情景を思い出してみる。
…そういえば、変わった子がいたような…。
前方の席はほとんどが「キャー」とか「ワー」とか手を振りながら叫んでいたけれど、一人だけジーッと見つめてきた子がいた…な。
「あの子のコートかな?」
漣斗は手に取った白いコートを見つめて呟いた。
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