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氏川の娘。清子さん。清ちゃん。幼児が我が家にやって来て早三日。氏川長介は迎えに来ない。
要するに清ちゃんは捨てられたのだろう。警察に行くべきか?多分そうだ。しかし、氏川は明日にも迎えに来るかもしれない。もしそうなら、清ちゃんは俺の冷血無情な判断で、警察に連れて行かれたという無用な苦い思い出を残す事になる。非はないが、それでもそうなる。氏川が数日内に迎えに来なければ、孤児院で過ごすという更に厳しい現実が降りかかるだろう。耐えられない程の罪悪感を俺は抱いてしまう質なのだ。氏川はそういった性分を狙って清ちゃんを捨てて行ったのかもしれない。
甘ちゃんか?いや、至って紳士なだけだ。軽率な行動は控えたい。それに清ちゃんは人畜無害だった。ここ数年まともに人と関わった事がない俺に取って、なんだか程良いリハビリにさえ感じる。
我が家にジェントルマンとレディが居ると言うのに、家の状況は相も変わらず荒廃しきっている。風呂場と洗面所は酷い、白い陶器製の台は水垢で桃色に変色し、床には色々な抜け毛が蓄積され、触れば容易に動く醜い柄のようになっている。さながら万華鏡。いや正確にはチン毛…、いや紳士はそんな比喩表現はしない。この抜け毛、半分は教育上よろしくない抜け毛である。つまりは陰の毛。そして風呂場、黒黴の状態は言うに及ばずだ。
清ちゃんが大人に成る過程で、不愉快なトラウマを培うには打ってつけの状況なのである。
幼女とは言えこの荒廃の風体、真にもってよろしくない。 一念発起して家全体の大掃除をする事にした。
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