―屋上から―

2/3
前へ
/262ページ
次へ
  夏の夕暮れ。 太陽はまるで昼間の力強さを忘れたかのように優しい光を放ち、楕円に広がりながらゆっくりと静かにビルの間に沈んでいく。 辺り一帯は濃い橙色に染まり、その美しさは見るもの全てを魅了する。 ――ここは十五階建てのビルの屋上。 手摺りのついていないその建物の縁に座ると、まるで自分の為だけにこの景色が用意されたような優越感を味わうことができる。 バランスを崩したら一気に十五階分落下という危険も孕んでいたが、街を独り占めできたような気分に浸れる絶景スポットだった。
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1838人が本棚に入れています
本棚に追加