夕日のころ

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  翌日の夕方。 早く帰宅した父と落ち合い、緊張のあまり震える足を呪いつつ、あのビルへと向かった。 屋上へと続く階段を一段上る度、鼓動が速くなっていった。 父はまだ納得してないようで、その歩みは軽快に見える。 昨夜は全く眠れなかった。 授業中も上の空で、今日一日何をしたか覚えていない。 頭の中はとにかくゆうひと母のことでいっぱいだった。 父に言われた通り、ただの思い過ごしかもしれないと何度も比べたりしたが、無駄に終わった。 考えれば考える程に、共通点は増えていくばかりだった。 天候に恵まれた今日。 街には柔らかな夕日が降り注いでいた。
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