夕日のころ

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「ゆう……お……お母さ……ん?」 声が意図せず震える。 ゆうひは今にも泣き出しそうな顔になりながら、躊躇いがちに頷いた。 「そうよ、旬……お母さんよ……今まで黙っていてごめんなさいね」 駆け寄る僕を両手いっぱい広げて受け止める母は、いつしか光を帯び、大人へと成長していた。 「ごめんなさい……ごめんなさい、僕……ひっく……」 かつての暴言を謝罪しようとしたが、母はそれを優しく制した。 唇に母の人差し指が当たり、何も話せなくなる。 「いいのよ。旬の気持ちは、十分過ぎるくらい分かってるわ。だから、もう何も言わなくていいの」
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