特別編 真冬の桜

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意地悪そうな笑みじゃなくて、本当に穏やかな笑みを浮かべる人に怒れるわけがない。 「宝珠は、俺のモンってこと」 「は?」 わけの分からないことを言って、満足したのか、お参りをしている。 つられて、私も手を合わせて目を閉じた。 …私、今すっごい幸せだよ。 届くかわからないけど、そう気持ちを込めた。 …あんたは、幸せ? そう思った刹那、鼻先に冷たい感触。 次は、指に。 瞼に。 と、広がっていく。 目を開くとそれは… 「雪…」 「雪だな」 いつのまにか、隣に来ていた陵海が右手を翳しながら言う。
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