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「死ねばいいのにと思った事はあるけど、残念ながらまだ生きてる」
残念ながらとは酷い言い草だ。そんなに嫌いなのだろうか。
「叶さんって、お兄さんと仲悪いんですか?」
一瞬だけ、叶さんが驚いたように目を見開いた。
本当に一瞬だけで、叶さんは何かを考え込むように視線をそらした。
「嫌い……嫌いか……」
叶さんが小さく唸りながら額にてのひらを当てる。
それを見て俺は思わず吹き出してしまった。
「ん?何?」
「いえ、何でもないです」
笑いながら誤魔化す俺に対し、叶さんが不思議そうに首を傾げる。
失礼かとは思ったがこればかりはどうしようもない。
なにせこの三人は、性格はまるで違うのにまったく同じ癖があるのだ。
どういう訳だか、兄の小石さんと、小石さんの妹で、叶さんたちの姉にあたる風馬(ふうま)さん、末の妹に当たる理々(りり)――もっとも俺は彼女の事を知らないが、にもまったく同じ癖があるらしい。
「嫌いかどうかと言われたら、よくわからないけど」
小さく笑いながら叶さんが顔をあげる。
その目はやはり、普段の叶さんとは違っていた。
目付きが鋭いというのとは違う。
世界の全てを見下すかのような冷たい目だった。
「俺が何かをする時に邪魔になるようであれば、嫌いになるかもしれないな」
叶さんは口の端を吊り上げて、
「もちろん、君もね」
と笑った。
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