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ところで、何か忘れている気がする。何だったか。
「あ」
思い立ってペチンと額を叩く。
「おっさんか。どうかしたのか」
「え、おっさんくさかったですか?」
「少なくとも中学生がやる行動じゃないぞ。で?」
「あー……。待ち合わせしてたんでした」
桐原との約束をすっかり忘れていた。
「早く行ってこい。悪かったな本当に」
明らかに木陰さんと木暮先生のせいだが、本人よりも反省している。本人がまったく反省していないというのもあるが。
「いや、叶さんのせいじゃないし。それにたぶんまだ大丈夫です」
何を根拠に大丈夫なのか自分でもわからないが、つい口をついて出てしまった。
「何時の待ち合わせなんだ?」
「いや、部活終わりに部室の前で会って、教室で待ってろと。部長も一緒です」
何の用かは知らないが、職員室までは距離があるし、まだ終わらないだろう。
「あ?皇なら俺会ったけど、さっき放送で呼ばれて、そのあとに。中等部の教室に用があるって」
「あれ?じゃぁもう用事終わったんですかね?」
「そうらしいな」
いくらなんでも早すぎないか?放送で呼ばれた後に別れて、桐原と話をして、木陰さんと会って、その間に終わったのだろうか。
「じゃあ俺失礼しますね」
そうとなったらあまりのんびりしていられないな。
叶さんも心配しているし、急いだ方がいいかもしれない。
「おう、また明日な」
「またねー菱荻くん」
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