一日前、午前

2/21
前へ
/32ページ
次へ
 何日も前から猛暑が続いていた。  あまりの暑さに学校へ行くのも面倒だった。  しかしむやみに学校を休んだりしたら、友達がやたらと心配するだろう。 「……ん……ふあぁ」  ベッドから上半身を起こして腕を伸ばす。  時計の針は七時半を指していた。  いい加減準備しないと遅刻する。  重たい体を引きずってベッドから降りる。  眩しすぎる陽射しが目に痛かった。 「んー…」  しばらくの間、ぼーっとしていたい気分だ。  多分このまま外へ出たら灰になる。 「もーずー、遅刻するぞー?」  しかしそんな俺の願いも空しく、ドアをノックする音は無情にも俺を急かした。 「鴃、入るぞー?」  返事を聞かず、その声はさっさと部屋に入ってきた。 「逢瀬もさぁ、律儀っていうかなんていうか」  俺、菱荻鴃(ひしおぎもず)と逢瀬雪比良(おうせゆきひら)はルームメイトだった。  しかし、せっかく部屋が余っているのだから、と一人部屋になったのだ。  かつて一年程生活を共にしただけあって、雪比良は俺の事を心得ていた。  こんなに暑くてじめじめした日は、学校に行くのも億劫になる。 「まったく、まだ七月だっていうのに、これからどれだけ暑くなるっていうんだろうね?」  雪比良がカーテンを開けてぼやく。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加