鮮やかな紅(くれない)

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今日も空は青いなぁ…。 校庭にキチンと整列している一年生=ガキ共を眺めながら、ぼぉぉっと過ごしていた。 熱心にチョークを鳴らす先生の声は、退屈なBGMでしかない。 ボクの席は窓際の後ろから二番目だし、絶好調のポジションっ。 背が高い西岡の死角に入って、サボっても先生から見えない。 そして、ボクは楽しく妄想にひたる。 新汰、大丈夫かなぁ…。 赤澤がいる三組だなんて、ツイてないよ。気が弱そうだから、イジめられてないかなぁ…。 休み時間になったら、教室を覗いてみよう。昼休み行けなかったしなぁ。 「寺島!寺島!寺島…。」 遠くからボクの名前を呼ぶ声がする…。 あれ? 「ちゃんと聞いてるのか?」 教科書で黒板をバンバン叩きながら、先生がスゴい目で睨んでるよ…。 「せんせぇ…。」 いつもより半オクターブ高い、甘えた声を出してみる。 「な、何だ??」 「トイレ、行きたいんですケドぉ…。」 先生が女性に免疫がないのをみぃーんな知ってる。チュー坊で生徒でも、彼にとって「オンナ」は「オンナ」なんだ。 「は、早く行って来なさい!」 声がうわずってる。可愛い…。 「はぁーい。」 こんな調子だから、クラスでも浮いてる。 受験生なんだし、「勉強シナキャ」思うんだけど…、優等生なんてボクの肌に合わないよ。 もちろんトイレなんて口実だから、新汰の教室を覗いてみるか!
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