神様が住む楽園

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すごく嬉しかった。 じぃちゃん以外の人と喋ったのって、ずいぶん久しぶりだった。 ずっと「トモダチ」いなかったし。 僕は「カワッテル」からね。 誰かに名前を呼んでもらえるのって、安心する。 じぃちゃんに名付けてもらった「新汰」って名前を声で聞いたのは…どのくらい前だったかなぁ? 「ヨリコ」の背中が夕焼けに隠れてしまうまで、ずうっと見送ってた。 輝きだした一番星を眺めていたら、じぃちゃんから教えてもらった讃美歌のメロディがナチュラルに溢れてきた。 あの子とは「トモダチ」になれそうな気がする。  どうせ、辺りには誰もいないのだから…。 風が冷たくなった河原で、お腹の底から聖なる歌を響かせた。 躰が楽器=フルートになる。 天までとどけ…。 星までとどけ…。 夜景を。夜空を。世界中を僕の聲の波動が包むようで、とても…気持ちがいい。気分がいい。 草むらがサワサワと鳴って、静かに伴奏してくれた。 「トモダチ」と約束したから、明日は学校へ行くよ。 おやすみ…じいちゃん。 おやすみ…ヨリコ。
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