ープロローグー

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結局その事件、事故で三人の死亡者を出す結果となってしまった。 一人は、頭を銃弾が貫通して即死の女性星川花恵。 もう二人は、銀行強盗に入った犯人の車を追尾してた警視庁の警察官、いずれも男。 なお、パトカーの右前タイヤと花恵に命中した銃弾以外の発砲による死亡者や負傷者はなく、いずれもこの住宅街の片隅から三発の銃弾が発見されている。 暫(しばら)くしてから後、銀行強盗の犯人が逮捕されるというニュースが流れ、世間を騒がせた事件は一応終止符を打つかに見えたが、このニュースとほぼ同時に、太郎の勤務先である大手の某商社の株価が一気に下落、というよりは暴落した、という信じられないニュースも飛び込んできた。 そう、やはりあの事件当日に太郎が思ったやな予感は的中したのである。あの時見たヒゲ面の男は、太郎の上司にあたる人間だったのだ。 太郎の勤務先の商社は、彼の知らないところで、いわゆるダークビジネスもやっていたという新事実も発覚し、会社は瞬く間に倒産した。 太郎がその事実を知ったのは、妻の花恵と、あと数ヶ月後には誕生してきたはずであろう小さな命の成仏供養してもらう為の密葬の最中だった。 こうした二つの理由(妊娠中の愛妻とお腹の中の赤ん坊の死と、会社の闇取り引きの発覚による倒産)により、星川太郎という男は、あんなにも真面目な性格で仕事に勤しみ、家族を愛していたにもかかわらず、数年後には全くと言っていいほどの別人となってしまったのである。
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