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「懐かしいわね~、あの日もこんな雨の日だったかな?」
美鶴を連れて別室に移った美鶴母は懐かしむように雨が降る外を見た
「……あの……日って」
部屋の隅で縮まって泣いていた美鶴は顔を少し上げて訊く
「それはね~お父さんと私の出逢いの話し」
そう言うと少し悩んだ後に、美鶴母はゆっくりと口を開いた
「私が美鶴ぐらいの時、家は超がつく程厳しかったのよ」
初耳の美鶴は黙って母親の話しを聴いている
「ほらお母さん、ちょっと天然入ってるじゃない? それなりに生活も楽しかったからあんまり反発とかしなかったの」
ちょっとどころの天然じゃないけど……と美鶴は口に出さない
「で、ある日にいきなりお見合い写真を見せられたの」
「それがお父さん?」
いつの間にか泣き止んだ美鶴は昔話を少しワクワクしながら聴いている
「残念、違うのよ。その時にね学校で友達に相談したの、お見合いの事。そしたら同じ組だった三条君がね言ったの……」
そこまで言って美鶴母は笑う
「嫌なら俺が言ってやるってね」
美鶴はこの状況にドキリとした
「そしたら次の日曜日に三条君が来て、私のお父さんとお母さんを相手にね……何をしたと思う」
母の問いに美鶴は首を傾げる
「三条君……あなたのお父さんはね。精一杯土下座したの、恋愛ぐらいさせて上げて下さいって」
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