第二章 「double punch」

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 秋は今クラスメートの女子一名と屋上でランチという、一度は誰もが望むようなシチュエーションの中にいた。  この状況を説明するには必然的に遡る。  あれは新クラスになってから数日後の、委員会決めの事である。 ・・・・・・ 「なあ秋ちん、なんの委員会やる?」  担任が黒板に委員会名を書いている合間に、優はこっそりと秋の席……窓際の最後尾という最高のスポットまでやって来た。  因みにこの席は渡辺という男子の席だったのだが、彼は眼が悪いので何故か最前列の秋と入れ替わる事になったのだ。 「それは……秘密だな」  秋は意味ありげに言うと、優は納得しない様子で自分の席に帰って行く。 「それじゃあまず、クラスの委員長をやってくれる人」  書き終えた先生は、一番最初にクラスのトップを決めるために皆に目を向ける。  ここでは秋は動かない、狙いは只一つ副委員長だ。  一見すると委員長に次いで面倒くさいと思われがちだがそれは違う、ナンバー1が有能なほどナンバー2に仕事はまず回ってこない。と、いうのが秋の考えである。  そしてクラスに1人位は、そのナンバー1を率先して務める人が出て来る。  しかもそういうタイプは有能だ。  今やそれがセオリーになりつつある。 「はいは~い、私が委員長やります」  元気良く挙手する生徒が一名、秋の予想通りに事が展開する。  声を聴く限りで有能かは判断しにくいが、率先する点では期待できる。 「じゃあ、他に居ないから委員長は入谷で決まりだな」  他に挙手が無かったので、自動的に入谷と言う女子生徒がこのクラスの委員長に就任した。 「じゃあ、次は副委員長だが」 「はい!」  秋は先生が言い終わる前に挙手をする。  秋の勢いに負けたのか誰も手を挙げない、そしてみんなが秋を見ていた。 (一年の時に事件を起こした俺じゃまずいのかな)  新撰組事件以来、周りから良い印象を思われていないと秋は思っている。  それは単なる勘違いなのだが、秋はそれを気にしていない。  他に立候補者が居ないので、秋が自動的に副委員長になったわけだ。
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