日常

10/13
前へ
/13ページ
次へ
女の子は次々と質問をしてくる。 返事があるわけでも無いのに、熱心な事だ。 まあ、心の内では私も返事をしているのだが。 「ねえ、おっきな木さん。あなたはいくつなの?」 私の年齢かい? いったい何歳なのだろうね。残念ながら私自身にも分からない。 年など、とうの昔に忘れてしまったよ。 ……そうだな。たしか、百を越えた辺りから数えるのをやめたんだ。 年を数えることになんの意味もないと気付いたからね。 「えっとね。私は五歳なの」 ほう。お嬢ちゃんは五歳なのかい。 いったい私の何十分の一になるんだろうね。 その後も、女の子は次々と質問を続けた。 どうやら私のことが興味津々といった様子らしい。 やれやれ……。自分の事をやたらと聞かれるのはあまりすきじゃないのだがな。 長い長い過去を思い返すと、嫌なこと……思い出さなくて良いことまで思い出してしまう。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加