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「それでねそれでね、ママったらこんなこというの」
……やれやれ。いったいいつまで話し続けるのだろうか。
女の子はいっこうに話を終える気はない。
元気なことだ。これが子供らしさと言うところなのだろうか。
しかし、しだいに太陽もその位置を低くしていき、世界をオレンジ色へと鮮やかに染めようとしていた。
今まで木の幹に腰掛け、ニコニコと私達を眺めていたおじいさんがそれに気付き、女の子へと声を掛けた。
「お嬢ちゃん、そろそろお家に帰った方がいいんじゃないのかな。お母さんが心配するよ」
女の子はおじいさんに言われて、周囲を見回した。
それで初めて今の時刻に気付いたように、目をまん丸と見開いた。
「…いけない、もうこんな時間だ!それじゃああたし帰るね。ばいばい、おっきな木さん、おじいさん」
「ああ、気を付けてお帰り。良かったらまたおいで」
手を振りながら駆け抜けていく女の子に、おじいさんも同じように手を振りながら笑顔で見送った。
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