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女の子の姿が消えた後、おじいさんは
「本当に元気のいい女の子だねえ」
と、誰に言うわけでもなくぽつりと漏らした。
その顔には、まるで本当の娘に向けるかのような優しさがあふれていた。
……そういえば、おじいさんには子供はいるのだろうか。
今までにおじいさんの口から、そのような話が出た覚えはない。
──おばあさん、つまりおじいさんに奥さんがいた事は私も知っている。
昔は二人でよく私の元へと顔を見せに来てくれたものだ。何もかもが懐かしい。
それがある日を境に二人ともパタリと来なくなった。
いったいどうしたのだろうかと心配していた数日後、久しぶりに姿を現したおじいさんの隣には誰もいなかった。
……それ以上、私は考えることはしなかった。
幾年も齢を重ねると、このような体験は数え切れないほどにしてきた。悲しみはすでに通り過ぎている。
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