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3人の下校が続く様になり、なんとなく匠君も私もぎこちなさが消えてきた頃、3人揃ってバーガーショップで雑談していた時に事の発端は起きた。
4人用のテーブルで亜希と匠君が私の向かいに座っていた。
匠君はシェイクを飲みながら私の顔をじっと見つめる。
私はポテトを頬張っていた。
亜希はいつもの調子で明るく喋っていた。
亜希が匠君の視線に気付き、どうしたの?と丸い目を更に丸くして匠君に質問した。
すると匠君は、う~ん…と、ひと唸りした後に間を置いて喋りだした。
「いや、紗奈ちゃんさぁ、もったいなくない?」
亜希と私はまた更にきょとんとした。
「何がもったいないのよ?」
亜希が分からない、といった様子で聞いた。
「や、失礼かもしんないけど、元はそんな悪くないと思うんだよね。もっとこう…お洒落してみたら?」
そんな事考えた事なかった。
確かに匠君の言う通りかもしれない。
私は高校生だと言うのに眉毛のお手入れすらまともにした事がなかったのだ。
髪は元から直毛なので特にいじる事もなく、化粧なんてもってのほかだ。
なんだか恥ずかしくなった。
もじもじしている私を尻目に亜希が考えた様に喋りだした。
「匠君…それ失礼よっ!紗奈はこのままでも可愛いじゃないっ!でも確かに…いじったらもっと可愛くなると思う♪」
無邪気に笑って亜希は私の顔を覗き込んだ。
何だか恥ずかしくて、長い前髪でなんとか顔を覆った。
亜希も特に化粧をしているとかではなかったけれど、元々華やかな顔立ちに持ち前の明るさがプラスされて綺麗だった。
「俺の知り合いに美容師がいるんだ。髪からメイクから頼んでやるよ。どうせ紗奈ちゃん自分じゃ動かないでしょ。」
なんとなくムカッとしたけれど、匠君の意見は正しかった。
話はとんとん拍子に進み、匠君の知り合いという美容師さんの休みに合わせて私の改造計画が実行される事となった。
亜希はとても嬉しそうだった。
私も緊張はしたけれど、少し嬉しい気持ちがあった。
もしかしたら、自分も亜希みたいになれるんじゃないかって期待があったりした。
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