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「転校生を紹介します。井原亜希さんです。みんな仲良くしてあげて下さいね。」
落ち着いた、でも明るい口調で、1年4組の担任の稲垣先生が亜希を紹介した。
この時、私と亜希は出会った。
亜希は照れ臭そうに、それでも努めて明るく自己紹介をした。
「はじめまして!井原亜希です。隣町から引っ越してきました!宜しくお願いします!」
亜希が放つ独特の明るいオーラに、クラスのみんなも微笑んでいた。
亜希はパーフェクトに近い子だった。
成績はいつも上位だったし、スポーツもよくでき、何よりみんなに優しかった。
最初は女子も亜希のルックスの良さ等を妬み、陰口などもちらほら出ていたけれど、亜希はそんな事はものともせず、常に明るく、陰口を言い触らすような子にも積極的に話しかけ、誤解を解いていった。
1ヶ月もすると、亜希の悪口を言う子は一人もいなくなった。
そんな亜希と私はどこで仲良くなったのかと言うと、よく有りがちな席が近くと言う理由だった。
亜希はいつも私といてくれた。
もちろん亜希に寄ってくる子は多かったけれど、暗かった私を一人ぼっちにさせる様な事は、ほとんどなかった。
「紗奈~!あっち楽しそうだから行こうよ!」
他の子達の輪を指差して亜希が私を誘った。
「あ、あたし…あんまり賑やかなの好きじゃないから…。行っておいでよ。」
賑やかな女の子達の中には、私では浮いてしまって居心地が悪いのを私は知っていた。
すると亜希はこう答えた。
「そっか!じゃあ、今日はやめとこっ♪あ、それより紗奈!美味しいアイスクリーム屋さん見つけてね、……………」
私はびっくりした。中学に入ってから新しく声をかけてくれた子はいたけれど、私がいつも俯き加減で断ると、いつの間にか一人ぼっちになっていた。
断る私の側で、なんでもない話を私に投げかける亜希は、正に私の太陽そのものだった。
亜希のおかげで、少しづつ明るい輪にも入れる様になっていった。
「紗奈笑いなよっ♪紗奈は笑った方が可愛いよっ!」
亜希はいつも私を笑顔にしてくれた。
気付くといつも亜希と一緒にいた。
何故亜希が私の側にいたかは分からなかったけど、今思うと多分、ほっとけなかったんだと思う。
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