77069人が本棚に入れています
本棚に追加
/1006ページ
まだ早朝、朝靄のかかる薄明るい時間…。
黄土色の使い込まれた革のマントを羽織った十代の男が、息を切らしながら森の中の草木をかき分け走っている。
すでに息は上がっていて、服の汚れようからすればかなりの距離を走ってきたに違いない。
フードを深くかぶっていて顔が見えず、常に後方を気にしているようだ。
「ハァッ…ハァッ…
しつこい奴らだ…」
何かに追われているようだが……。
後ろ十メートル上空には小型の竜に乗った騎士が3人、その男の後を空から追っているのだ。
竜騎士が杖をその男に向け、魔法詠唱を始めた。
「ファイアエクスプロードォ!」
詠唱後、そう言うと男の走っている辺りが炎上し爆発した。
土煙を巻き上げ爆炎が男を襲う。
吹っ飛んだ男は一度体勢を立て直し、竜騎士達に指輪のついた右手を向けた。
「しかたない…」
そう言うと男は魔法を発動させるための詠唱を始めた。
「アルバ・レィ・クォン・チイ・カラミナ…」
男の指輪が淡く光る。
「なんだ!?逃げる気か!
盗賊!」
竜騎士が言葉を言い終わる前に、そこら一帯が黒い波動に包まれた。
「違う…逃げるのはお前だ…ガオル」
そして男は最後の詠唱の言葉を発する。
「フォン・グランド…」
「まさかッ!空間転移魔法…!!」
竜騎士は杖を構えたが遅かった。
天高く、黒い柱が立ち上り、瞬間に柱が出現した部分は無になっていた。
最初のコメントを投稿しよう!