chapter0─プロローグ

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まだ早朝、朝靄のかかる薄明るい時間…。 黄土色の使い込まれた革のマントを羽織った十代の男が、息を切らしながら森の中の草木をかき分け走っている。 すでに息は上がっていて、服の汚れようからすればかなりの距離を走ってきたに違いない。 フードを深くかぶっていて顔が見えず、常に後方を気にしているようだ。 「ハァッ…ハァッ… しつこい奴らだ…」 何かに追われているようだが……。 後ろ十メートル上空には小型の竜に乗った騎士が3人、その男の後を空から追っているのだ。 竜騎士が杖をその男に向け、魔法詠唱を始めた。 「ファイアエクスプロードォ!」 詠唱後、そう言うと男の走っている辺りが炎上し爆発した。 土煙を巻き上げ爆炎が男を襲う。 吹っ飛んだ男は一度体勢を立て直し、竜騎士達に指輪のついた右手を向けた。 「しかたない…」 そう言うと男は魔法を発動させるための詠唱を始めた。 「アルバ・レィ・クォン・チイ・カラミナ…」 男の指輪が淡く光る。 「なんだ!?逃げる気か! 盗賊!」 竜騎士が言葉を言い終わる前に、そこら一帯が黒い波動に包まれた。 「違う…逃げるのはお前だ…ガオル」 そして男は最後の詠唱の言葉を発する。 「フォン・グランド…」 「まさかッ!空間転移魔法…!!」 竜騎士は杖を構えたが遅かった。 天高く、黒い柱が立ち上り、瞬間に柱が出現した部分は無になっていた。
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