18505人が本棚に入れています
本棚に追加
――――。
古川は戦車の上から仲間の様子を見守って、ホッと息を撫で下ろす。
「ホントにどうかしてるな俺」
戦車の上で呟く古川は血で汚れていない場所に寝転がる。当然拳銃は手放さないまま。
「何がゾンビだ。ただの作り物のくせに....」
古川自身、自分の行いは決して良いものではないと自覚していた。しかし状況が今の自分をこうさせる。さっき井手口に言い返さなかったように。
「そういや....」
古川は突然何かを思い出したかのように立ち上がると、おもむろに大の字で死んでいる自衛官に近付く。自衛官の首元で、何かが太陽光を受けてキラリと光った。
それを取ると、ドッグタグだった。チェーンネックレスのように首に掛かっている。
『KAKERU YAMAMOTO』
と刻印されたタグ。裏には、自衛隊の師団番号等や血液型が刻まれていた。古川は向き直り、もう一人の自衛官の死体を調べる。
「この人、どこかで....」
はっとして古川は死体の首をあさった。山本という人物の死体と同じようにドッグタグを引ったくるように取る。ドッグタグに流れ着いた血を指先で拭い、刻印を見た。
『TAKAHIRO ARIMURA』
古川はがくりと肩を落とす。死体の顔には、やはり見覚えがあったのだ。
「この人、やっぱり....」
古川の頭の中で、抜けていたピースが次々と繋がった。
最初のコメントを投稿しよう!