ゴーストタウン

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下野は井手口の安否も心配だったが、目の前でうずくまる男を優先させる。井手口が簡単に殺されるような男でないと確信していたからだ。 下野は席に突き刺さった包丁を引き抜くと、距離を取った場所に放り投げる。その間も男は絶叫し、苦痛に顔を歪ませる。男が頭からすっぽり羽織った黒いシーツに血が滲み出て赤黒く変わって行く。 もう男に抵抗する姿勢は見られない。下野は男を置き去りにして禁煙席まで走った。 「下野!大丈夫かよ!?」 途中、厨房から出て来た江原に声をかけられたが、今はそれどころではない。下野は江原と一瞬だけ目を合わせると、すぐに禁煙席に走る。 パン!! 銃声一発。 乾いた音がファミレスを支配する。下野と江原は、びくりと立ち止まる。 「井手....口?」 返答は無かった。
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