ゴーストタウン

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「井手口!?」 江原と下野が喫煙席に駆け込むと、目に入るのは二つの人影。一人は床に背を付け、仰向けになったまま動かない。もう一人は腰を下ろしてその男を見下ろしている。 当然一人は井手口だった。黒い服を着た男を見下ろしている。 「ゴホッ!!」 男は濁った咳をする同時に少量の血を吐いた。注視すると、井手口の手には硝煙が立ち昇る拳銃が握られていた。 倒れている男の腹には銃創が残っている。おそらく肺に命中したのだろう。男は激しい咳をしながら血を吐き続けると、やがて動かなくなった。 「俺は悪くない....!こいつ、がっ、か、勝手に....切りつけてきたんだ!」 いつもの威勢も無くしながら井手口が言った。井手口の武器の拳銃とは反対に、男の手にはポケットナイフが握られていた。その刃は赤い液体を滴らせている。江原がすぐに井手口に向き直った。 「お前、怪我を!」 江原の言葉に、すぐさま下野も反応していた。井手口の右頬には無かった筈の軽い切り傷があった。
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