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もちろん心配しないわけなどない。江原は迅速にトイレから出ると、禁煙席に向かおうと歩調を早めた。
「ウゥ....」
突如として聞こえた呻き声。そう遠くなかったことから、江原は発生源と思われる方向に素早く拳銃を向けた。今の声は確かに死者のものだった。声は右の女性用トイレからだった。
「何だよ....」
少し抵抗はあったものの、右手に拳銃を持ち、左手でドアノブを掴んで、ゆっくりと回す。
中に顔を覗かせる。
凄惨だった。
トイレの床には夥(おびただ)しい血が溜まり、強烈な鉄の臭いを放っている。隅に存在する排水溝はまるで役に立っていなかった。
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