ゴーストタウン

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トイレの床には女性ウエイターが横たわっていた。その首には小型のナイフが突き刺さっている。搬入路で死んでいたコックと酷似している。 しかし問題はそれだけでなかった。女性の首から下には六人の死者が群がり、開かれた腹部に手を無造作に突っ込んで腸を引きずり出し、口に詰め込んでいた。 グチャグチャとグロテスクな音も江原の耳に届いた。と、食事中の一人だった若い男が戸口で唖然とする江原に目を向けた。 不意に合った目と目。 江原は蛇に睨まれた蛙の状態になる前に、ゆっくりとドアを閉めようとする。 「し...失礼しました...」 ドアを閉じようとすると、男は咆哮を上げてドアに飛び付いて来た。 江原は仰天してドアを思い切り閉める。必然的な行動だが、それが仇となった。その音に芋吊る式に残りの死者が反応し、ドアに飛び付いたのだ。 バアン!!バアン!! ドアが激しく揺れ、江原は間一髪でドアをこじ開けられるのを阻止した。死者の集団はドアノブを回してドアを開けるという知識が無いことが分かると、江原は大急ぎで二人の元へ向かった。
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