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しかし男に奇跡やチャンスなんて残されてはいなかった。確かに六人の死者はドアの向こうの三人に夢中で男に気付いていない。だが“六人以外”なら話は別だ。
厨房へ進もうとした男の口がOの字に大きく開いた。その表情には絶望でいっぱいだ。ファミレス外の三人にも十分見て取れる絶望感だ。
厨房からナイフが体に突き刺さったままのコックが現れ、男の前に立ち塞がる。江原の頭の中に搬入路で死んでいたコックがフラッシュバックする。次の瞬間、コックは男に飛びかかっていた。
「た、たた、助けて!!助けくれー!!」
押し倒された男が泣き叫ぶ。ドアに張り付いていた六人の死者はくるりと振り返り、男を発見するなり、我先にと飛び付いて行く。
この世の物とは思えない金切り声が店内に響き、三人は耳を押さえた。なす術も無く、男は体に歯を立てられる。
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