ゴーストタウン

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同時刻 「う....」 自衛官 友安はゆっくりと目を開いた。差し込む太陽の光に目が眩み、弱々しく呻きながら顔の周りを見渡すと、残骸だらけだった。 高橋、山口、友安を乗せたヘリはミサイルで撃墜されたのは夢では無かったと分かる瞬間だ。ズキズキと痛む左腕は小銃やマシンガンの弾薬の入った箱に踏まれていたが、負傷はしていないようだ。 「く、そ....」 頭がボーッとする。脳震盪を起こしているのだ。友安は空いた右腕で左腕にのしかかった弾薬箱をどかし、おぼつかない足取りで立ち上がった。 顔の数ヶ所を切り、血が出ていたのは自分の頬を触れることで理解出来た。 「高橋...?」 一番に気付いた。墜落する前に自分の横に居た高橋が機内から忽然と姿を消していた。思考がマイナスに働く前に行動するしかない。友安は這いずるようにして操縦席へ移動する。 「山口....」 操縦席に座っている山口は操縦桿を握ったまま、ぐったりと首を傾かせていた。その山口の腹部には長い鉄片が突き刺さり、ペンキをぶちまけたように血が流れていた。 「嘘...だ...」 その瞬間友安は仲間を失う絶望感と怪我のダメージが両立し、もう一度意識を失うことになった。
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