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カンカンと鉄製の非常階段を駆け上がる音だけが古川の耳に届く。
「七階だよな...」
古川は手にしたトカレフ拳銃を絶えず構えながら一挙手一投足に神経を尖らせていた。
古川は確信していた。戦車の上にあるのは紛れも無く、友人である有村順平の兄の死体であると。
古川は戦車から走って5分という位置に、友人の有村順平の住むマンションが在るのは把握済みなので、三人には悪いが、時間を割いて向かっているところだった。
息を切らしながらも、非常階段で7階に到達する。マンション内を進み、死者との遭遇を恐れたためだ。
「あれっ?」
7階へのドアは完全に閉ざされていた。内側から鍵が掛かっているのだ。すぐに古川はドアノブを蹴飛ばしていた。
昔、三流筆者の書いた本で読んだ知識を頼りにした行動だ。それに弾も多くないため、銃は使用したくなかった。
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