単独行動

3/9
前へ
/569ページ
次へ
何度か蹴り続けていると、ガギッ!という、耳障りな金属音がしてドアノブが外れる。 「よし....」 トカレフ拳銃を両手で構え、古川は爪先でドアを押し開けた。ドアの先には、マンションの7階通路だった。四軒の部屋が見て取れるが、有村の家は手前から三番目の部屋だ。 有村の在宅を気にした古川は携帯電話を引っ張り出した。しかし有村に電話して、十回ほどコールしたが誰かが出る様子は無い。しばらくして留守番電話に繋がってしまった。 『お前の家の近くに居る。いるなら電話しろよ』 留守番電話にそう話した瞬間、微かにではあるが、部屋から物音と話し声が確かに聞こえた。古川は壁に背中を押し付けて室内を警戒した。 物音が無くなったのを確認し、古川は早鐘を打つ左胸を押さえながら立ち上がり、ドアノブに手を掛けた。 構わず思い切りドアを引く。しかしドアは金属音を立てたあと動きを止めた。 「え?」 ドアにはチェーンロックがかけられていた。やはり誰かがいるのだ。
/569ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18505人が本棚に入れています
本棚に追加