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視線を上げ秋山を見る。しかし、返事をするのも面倒だったので、手を振るだけで答えた。
ため息をついて秋山は前を向く。
いつもの朝、いつもの会話。それが普通、それが日常。これはこれで悪くない。
平和が一番だ。しかし――楽しくない。安定はつまらない。不安定だからこそ、楽しいと思える。ふと、サーカスの綱渡りを連想した。あれは見ていて楽しい。失敗するかもしれないからだ。
いや、練習をしているのだから確率は低いだろう。
しかし万が一がある。
そこに僕たちは惹かれるのだろう。
落ちても死にはしない。それを僕たちは知っている。
安全な不安定というわけだ。
結局僕たちは安定の中でしか生きていないのか。
今、こうして僕が担任の話を聞き流していられるのも僕の生活が安定している証拠だ。
担任の声が遠くなっていく。その心地よさを自覚しながら、そして多少の退屈を感じながら僕の意識は眠りへと落ちていった。
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