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何時間位登っているのだろう?いや、何日間位なのか、それさえわからない。でも、不思議と疲れていない!眠くもならないし、お腹もすいていない。なによりも、階段の登りがこんなにも、楽なんて!確実に登っている!足を階段にのせる度に、クッションでもついているかの様に優しく、跳ね返ってくる!なんだ!うっすらだが、明らかに、今までとは違う光が見えてきた。その光の中に、扉が見える!とてつもなく大きな扉だ。登っても、登っても、その大きな扉は、近づいてこない。何故か苦しくなってきた。頭が痛い。胸が苦しい。頭の中で、誰かが叫ぶ[そんな苦しいのに、なぜ登るんだ!もう無理 だから、辞めなよ!]心地良い声だ! もう一度響く[そんな意味の無い事して、どうするの?]優しい声の中に、何か、違和感を覚える!痛い!苦しい!登る度に、痛みと、苦しさが、増してくる。俺はなにしているんだ?また、頭の中の声[今、登るの辞めたら、良いこと教えてあげるよ]気持ちが揺らぐ!うるさい奴だな!そう思った瞬間[何故、無視をする!何故俺の声を聞かぬ!]今までとは、うって違う、恐ろしい地の底から響く声。何故か、聴いてはいけない声、何故か聴いてはいけない声。そんな思いが涌いてきた。益々酷くなる。もう目もうつろになってきた。でも登らなくては。そんな思いだけで、大きな光輝く扉に向かって登って行く。あれほど、楽だったのに、一歩一歩がきつい。苦しい!またあの声だ。[貴様、俺の言う事が聞こえぬなら、食い殺してやるぞ~!]身体全体に、響き渡る。[くそー、負けてなるか!]今まで出なかった声が出たー!はっきりと、声が出る。もう足では登れない。手で、這い上がる。一段また、一段。何かが、手に触れた。人の手だ。暖かい、優しい手だ。顔を見上げて見ると、おばあちゃんが笑っている![しよちゃん、頑張ったね!]涙が溢れた、その瞬間、大きな光輝く扉が、す~っと、開き始めた。
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