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着けたばかりのタバコを慌てて揉み消し、殆んど飲まなかったコーヒーも片付け出口へ向かった。
改札が見えてくると、美樹の姿を探す。
キョロキョロとしていると、肩をポンと叩かれた。
「美樹?」
笑顔で振り向くと、そこにいたのは美樹とは似ても似着かぬ小太りの中年の男だった。
「ああん?ミキ?誰だそれ?」
背丈は新の肩ぐらいまでしかないその男は、下から陰険な眼差しを新の顔に向けた。
「お、小川さん!?」
「小川さんじゃねぇよ!お前調子悪くて会社休んだんじゃなかったか!?」
「え!?い、いやそれは…」
「今、ミキとかほざきゃぁがったな?会社さぼって女と良い事しよぉってのか?」
「……」
この小川と言う男、新と同じ工場に勤める新の後輩である。
後輩ではあるが、歳は新よりもかなり上で44~5であろうか…
前に勤めていた会社が倒産して、今の工場に勤めだしたのは1年前だ。
以前の勤めでそれなりの役職にいたせいか、妙にプライドが高く、自分より先輩の新を歳下というだけで呼び捨てにし、同じ部署でありながら協調性が無いためなかなか打ち解けない人物だ。
俗に言う鼻つまみ者だ。
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