第一章

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その先の坂を上り、十字路を右へ… 更に10分程行ったあたりと記憶している。 坪数は小さいが、一応一戸建てと聞いている。 近くまで行けば表札で解るだろう。 しかし、できれば帰宅する前に追い付いておきたい。 小川の奥さんや子供には聞かれたくない内容だ。 新は駆け足で追った。 坂の上の十字路のあたりで追い付いた。 「いた…小川さん!」 大声で呼び止められ、当の小川は迷惑そうに振り向いた。 「なんだ、秋津かよ?何の用だ?」 息を切らせて走り寄った新は、そこで気が付いた。 なんと説明したらいいのだろう… 「あ…いや、そのぅ…」 「女が戻って来たのか?」 「いや、そうじゃないんですが…」 「あん?じゃぁ、なんの用だよ!なんだったらお前の女を俺に回してくれてもいいぞ?」 陰険な眼差しが更にドロドロとしたものに変わり、新の顔に降り注がれる。 「な!?」 その言い様にカチンと来た瞬間だった。 目の前が一瞬真っ赤に見えた途端、意識が飛んでしまった。 どれくらいの時間が経ったのだろう… あたりはすっかり暗くなっている。 我に帰った新は周りを見回した。
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