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その先の坂を上り、十字路を右へ…
更に10分程行ったあたりと記憶している。
坪数は小さいが、一応一戸建てと聞いている。
近くまで行けば表札で解るだろう。
しかし、できれば帰宅する前に追い付いておきたい。
小川の奥さんや子供には聞かれたくない内容だ。
新は駆け足で追った。
坂の上の十字路のあたりで追い付いた。
「いた…小川さん!」
大声で呼び止められ、当の小川は迷惑そうに振り向いた。
「なんだ、秋津かよ?何の用だ?」
息を切らせて走り寄った新は、そこで気が付いた。
なんと説明したらいいのだろう…
「あ…いや、そのぅ…」
「女が戻って来たのか?」
「いや、そうじゃないんですが…」
「あん?じゃぁ、なんの用だよ!なんだったらお前の女を俺に回してくれてもいいぞ?」
陰険な眼差しが更にドロドロとしたものに変わり、新の顔に降り注がれる。
「な!?」
その言い様にカチンと来た瞬間だった。
目の前が一瞬真っ赤に見えた途端、意識が飛んでしまった。
どれくらいの時間が経ったのだろう…
あたりはすっかり暗くなっている。
我に帰った新は周りを見回した。
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