第二章

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取り敢えず、『愛』と言って思い浮かぶのは美樹の事であった。 小川の件の日に怒って帰ってしまった訳だが、深刻になるような理由ではないのであの後すぐに仲直りしている。 しかし…しかしである。 美樹は大好きだが、彼女との関係は本当の愛なのであろうか… 付き合ってはいるものの、この先ずっと一緒に人生を歩むパートナーとなり得るのか、新には判断着きかねていた。 結婚… 新自身もまだそこまで具体的に考えていた訳ではないし、美樹にしたってそうであろう。 この賭けがあるからと言って、彼女をその対象と決めて果たしていいのだろうか… もし、彼女への思いが奴の認める愛ではなかった場合、奴はすぐさま新を乗っ取り目の前の美樹を最初の餌食にするだろう。 『本当にヤバそうだな…』 考え込んでいるだけでは何の解決にもならない。 取り敢えず美樹をその対象に考え、行動に出る事にした。 終業の17時の鐘が鳴り、新はそそくさと帰り支度を始めた。 「あれ?秋津、今日はもう帰るのか?」 2年程先輩の柳沢が声を掛けた。 「すんません。今日はちょっと用事が…」 そう言って新は小指を立て、意味ありげに笑った。
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