第一章

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「そうか…じゃぁ秋津君、わたしはこれで。」 清瀬はそう言うと、着替えに家に入ってしまった。 それを目で追い、ふと被害者に目を向けると、若い刑事が先程の刑事に話し掛けた。 「井草さん、この仏さん指名手配中の江古田じゃないですか?」 「なに?どれどれ?」 井草と呼ばれた刑事はポケットから紙切れを取出し、何やら被害者と見比べている。 「ホントだ!?東京に戻ってたのか…しかし、こいつを殺るなんてどんな奴なんだ?」 被害者の江古田 優は全国指名手配中の強盗殺人犯であった。 裕福な家に押し入っては、一家を皆殺しにして金品を奪う、更には証拠隠滅の為に放火までするという筋金入りの悪人だ。 格闘技にも精通しており、一度警官に囲まれた時にも、数十人の捜査員に重傷を負わせて逃走している。 そんな会話を聞き耳を立てて聞いていた新は、少しほっとした。 「悪い奴だったんだ。」 自分が殺ったかも知れない相手が犯罪者と解った為だ。 「だが入曽よ、こんな奴でも人は人だ。殺人には違いない。」 「解ってますよ。必ずホシはあげて見せます。」 「そうだな。」
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