第一章

9/23
前へ
/29ページ
次へ
そこへ着替えを終えた清瀬が出てきた。 「刑事さん、お待たせしました。」 「すいません、では行きましょうか…入曽、あとは頼んだぞ?」 井草は清瀬を伴い手前のパトカーの後部座席へ滑り込んだ。 「署へ行ってくれ。」 制服の警官に指示をして、パトカーは署へ向かった。 新はここに居ても何も解りそうもないと思い、自分の部屋へ引き上げた。 部屋へ向かいながら、思わずニヤけている自分に気付いた。 「!!…俺、笑った?」 自分が自分でないような不思議な感覚… 「どうかしちゃったんだろうか…」 心の奥に何か得体の知れないもう1人の自分が棲み付いているような、嫌な感じだ。 焦る気持ちを押さえて小走りで部屋のなかへ戻った。 洗面所の水栓をひねり顔を洗った。 ふと見た鏡に映る自分の顔… 目線が合った時、自分に話し掛ける自分がいた。 「なにを驚いているんだ?」 自分で喋っているのに驚いた。 「俺が言ってるのか!?」 「そうさ、俺はお前だ。」 「!!」 言葉にならない… ならないが喋り続ける自分… 「昨日からお前の中に棲み着かせてもらった。」 「ど…どうなってんだ!?」
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加