溶けた雪

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「ふ~、お腹いっぱい!」 『ご馳走様』  手を合わせて頭を下げる、あいつの癖が移っていた。  ヒカリは「お粗末さま」と言って食器を下げ洗い始めた。何か歌を口ずさんでいる。 『ヒカリ…、ごめんな』 「何がぁ?あっ、そっちに箸ない?」  気にしている素振りを見せず、話すヒカリに箸を持って近づく…。 「傷心者が気をうんじゃないのっ!」 『痛っ』  空手初段の蹴が入る。ヒカリの優しさでなのか、蹴りの痛みなのか分からないが涙が出そうになった。  それに気付くヒカリ…、もう1発蹴が入る。 『買い物お供します』 「よろしい」  精一杯の強がりを受けとめてくれる。  ただ…ヒカリをいい様に使っているのに…。  それを分かってヒカリは、笑っている。
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