第4話 鳴かぬなら…

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「本屋で強盗なんて有り得ねぇーだろ! そもそも、強盗に出くわすなんて有り得ない」 強盗、物を対価を払わずに強迫や実力行使で得る方法。違法な行為。犯罪。 新聞やテレビなどで報道されるものもあればされないものもある。世界的に見れば毎日行われているような日常の中で少しズレた出来事。 「はぁ、そうだな」 「なんだよ、リアクション薄いなー!」 俺と和志は本棚の影に隠れている。 運が良かったのか和志が好むマンガやライトノベルのジャンルの固まったコーナーがちょうど強盗犯から遠く見えにくい箇所だった。 ヒソヒソしゃべっていても気付かれないほどの安全圏。 運が良いついでにこのままここで息を潜めているうちに強盗犯は目的を達成し、立ち去った後に無事に助かればいい、なんて思っていた。 一時間前までは。 「でも、あの強盗バカだよな。呆れて言葉もない」 あの強盗はいかにも金の無さそうな本屋を選び。あまつさえ手際の悪いことと言ったら見ていられない。子どものごっこ遊びがましに見える程に。しかも、もたついている間に通報され警官が到着。 そして、血迷った強盗は人質を取っての立て籠もりとあれやあれやと悪い方に転がる目まぐるしい展開。 間抜けという言葉を通り越し馬鹿としかやつを形容する言葉が見つからない。 「あいつが来て一時間経つしね。あはは、ホント馬鹿だなあの強盗」 和志が嘲笑まじりに皮肉を込めて言う。 …場違いな大声で。 「あ″ぁぁん? 誰だぁ、今の誰だぁ、うるさいぞ! こっちは計画がうまくいかなでイライラしているんだ! 殺すぞ!」 「うぁ、あ、やや、やべっ! 見つかった? か?」 馬鹿は1人じゃなかった。 見つかったことで慌てる和志。強盗犯の発言から正確な位置は把握されてないのはわかる。 別の場所移るか、ここで再び息を潜めるか、あるいは…。 どの行動を取ろうとも和志の声で、その辺りに人がいるという事実を伝えてしまったばかりに確実に助かる道はない。 そして、一つの違和感。 和志の一連の行動がわざとらしいのは気のせいか?
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