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「黙れっ! 黙れっ! 黙れっ! 黙れっ! 黙れっ! 黙れぇぇ!!」
強盗は怒りで単調な言葉しか発してこない。
近くの本棚を蹴り倒すなと、怒りをあらわにしている。まるでジャングルに住まうゴリラが縄張りを荒らされたときの様のようだ。
まぁ、いい傾向だ……よし、あとちょっとってところだな。
「ほーら、また、キレた! だからバカなんですよ、顔を真っ赤にしてまるで猿だ! でも知能はミジンコ以下かも……あ、そう言っちゃあミジンコが可哀相か。ミジンコのほうがいろいろと優れてるしなお前のよいなゴミクズよりは。それに、そうこうしている内に警察が突入してきますよ?」
俺は気付かれないように棚から本を取り、これまた気付かれぬように注意を払いつつその本を入口のほうに投げる。
すると、本は入口付近に落下し、ガサッと音をたてる。
「ひぃぃ~! うわっ、く、来るなぁー」
強盗の顔が一瞬にして青ざめ、奇妙で卑屈めいた悲鳴を上げながら銃口を入口に定め引き金を引く。
俺の思惑通りに強盗は警察が突入した物音と勘違いし、入口に向かって二発の弾丸を撃た。
強盗をする割にはなかなかの腰抜けらしい。
「あと一発」
「なに言ってんだおめー」
やっとの事で俺の塞いだ手を退けた和志が質問してくる。
「おもしれーからお前にも教えてやる」
こういうことは仲間と共有することで更におもしろい。
「な、なんだよ」
「あの強盗が持ってる拳銃はニューナンブっつて、普通の警官が持ってる5発式の拳銃だ」
なんで奴が警察の銃を持っているのかは謎だが……。
「で、なんなんだ?」
「だーかーらー、あいつはもう、4発撃ったから、あと1発でなくなる訳」
子供に説明するように丁寧に和志に言って聞かせる。
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