珍客

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悠咏は持っていた菓子器を机に置き、ムスッとした顔で愚痴を零した。  「まったく。別に私達が直々に皇女に会わなくても良かったと思わんか?一族のジジィらめっ!」  「いや、悠咏様が会って確かめないと意味無いんじゃ? それに、この先は光家と会う機会が増えるんですからね。」  菖韋の言葉を聞き、ふと悠咏は思ったことを口に出した。 ボソッ  「…皇女らは可愛いかな…? 」  この悠咏の少年めいた発言に少しびっくりした菖韋だったが、自分も素直に応えた 「まぁ私も皇女らの力に興味はありますがね。」 悠咏は目を見張った。 「マジでか!? いかんいかん!私は許さんぞっ!皇女二人は私に惚れさせるんだっ!!」 (……まったく何を考えてるんだこの男は…。) 菖韋は溜め息をついた。 「まぁ、今まで女人に好かれたことの無い方には、かなり難しいことだと思いますが?」 ――うっ!! その言葉に胸を刺された悠咏は、この後、夕食まで部屋の隅でいじけたのだった。 同じ時、城の奥深くの一室で、現王・晃眞(あきま)は執務を終えてくつろいでいた。 「う―ん…今年の野菜の出来は…地域により差がありすぎるな。城都からの支援を多くして…」 仕事は終わっているのに、まだブツブツ言っている。 晃眞は齢五十過ぎ。普通なら、まだ王としては先があるはずなのだが… 「失礼いたします。主上、沙貴妃樣がお話があるとのことで、おみえになっております。」 ふと聞こえた側近の声に、晃眞はピクッと眉をあげた。 「そうか、ここへ通せ。」  御意 と聞こえて少し後、執務室に美しい女が入って来た。 「執務はもう終わりましたか?主上。」 女が微笑む。 「あぁ。最近は作物の報告が多くてな。その処理ばっかじゃ。」 ニカッと晃眞が笑った。  沙冴菜(しょうさえな)は王・晃眞のたった一人の妾であり、また風華の母で、朱華の叔母である。 沙貴妃はスタスタと晃眞の前の椅子に座り、真剣な眼差しを晃眞に向けた。 晃眞もそれに気付き、正面を向いた。 側近達が茶の準備をして、部屋を出ていくのを確認してから、沙貴妃は口を開いた。 「今日、朱華が私の元に来ました。」 「して、朱華は何用で?」 晃眞を茶をすする。 「朱華は、…私を王にするのは、適当ではない。力も器も持ち合わせていない―。と、申しておりました。」 「ほう?冴はどう答えたのだ?」
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